妊娠、出産にまつわるデータ集:第1回
「小さく産んで大きく育てる」は間違い?
低出生体重児のリスク

ミキハウス編集部

妊娠前からの食生活改善も心がけて

では、赤ちゃんが低出生体重児になるリスクを避けるためには、どんなことに気をつければいいのでしょうか?
「ラブテリ 東京&NY」を主宰し、管理栄養士で予防医療コンサルタントの細川モモさんに話をお聞きしました。

「まずは、妊娠前から健康な体づくりを心がけること。とくに、日本女性は“痩せ”への注意が必要です。妊娠前に痩せ型の女性は低出生体重児を産む確率が高まります。現在の日本女性の平均摂取エネルギーは、20-39歳の妊娠適齢期の女性で1日1,615~1,662kcalです(※3)。妊娠時のエネルギー摂取量が1,500kcalを下回ると胎児の発育が少し悪くなるという報告がありますが(※4)、浜松医科大学が行なった妊婦栄養調査では、初期・中期・後期すべてにおいて1日約1,600kcalしか摂っておらず、後期にいたっては35%減だったという衝撃の研究結果があります。

今日からできる妊娠準備として、きちんと三食バランス良く食べ、適正体重(BMI)を意識しましょう。妊娠中の適切なエネルギーと栄養の摂取は赤ちゃんの体重増加に必要不可欠です。妊娠前に少食だった人が妊娠を機にたくさん食べられるかというとそうではなく、朝食を食べない習慣はそのままだったり、適量がそもそも不足していたりします。妊娠時に葉酸を不足させないためにも、食べる習慣をつけておくことをおススメします。

また、BMIの把握も大切で、ハーバード大学が看護士25万人を対象に行なった「Nurses’ Health Studay」によると、BMIが20.0~24.0の値でいることが妊娠しやすいBMIであり、21が理想値であると報告しています。米国人と日本人では体格や骨格が異なりますので、そのまま日本人に当てはまるかは調査が必要ですが、適正(18.5〜25)におさまっておくことは大切なことです。そして、BMIでは体脂肪の比率がわかりませんが、体脂肪率は17%を下回ると月経が止まるリスクが高まるため、それ以下にはしないようにしましょう。また、30%以上にもならないようにしましょう。体脂肪率が高すぎると排卵性不妊のリスクが高まってしまいます(体温チェックで排卵期の確認を)。」

 

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「また、喫煙も低出生体重児のリスク要因ですが、残念ながら若い女性でタバコを吸う人は増えています。ママの『喫煙』は低出生体重児になるリスクが増える要因のひとつと考えられています。タバコを吸うと血管が細くなってしまうので、赤ちゃんに十分な酸素と栄養が届かなくなるからです。」

さらに、「先進国の中で、日本だけが低出生体重児を増やしているのは、早産が増えていることとも関係があります」とも。早産は、出産予定日より3週以上前に赤ちゃんが生まれることですが、これは高齢出産が増えていることと無縁ではないそうです。厚生労働省が、低出生体重児を出産する割合を調査したところ、45歳以上の母親が最も多く、19.6%という結果に。以下、40~44歳は13.1%、35~39歳の11.7%と続きます。

これらは女性のライフスタイルの変化とも密接にかかわっているとも言えます。妊娠中だけでなく、妊娠するずっと前から、自分の体の仕組みを理解し、将来自分がどうありたいかを考え、まだ見ぬかわいい赤ちゃんのために、何ができるかを考えておくのも大事なことですね。

  1. ※3:国民健康・栄養調査
  2. ※4:ACOG Practice Bulletin IUGR No.12, 2000

 

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【プロフィール】
細川モモ(ほそかわ・もも)
予防医療コンサルタント、栄養コンサルタント
2011~2014 ミス・ユニバ−ス・ジャパン オフィシャルトレーナー
両親の末期がん闘病がきっかけで予防医療の道へ進み、欧米の先進的な取り組みや栄養学について7年以上現地で学ぶ。東京とニューヨークに支部を構える予防医療プロジェクト「ラブテリ 東京&NY」を発足、主宰者に。国内外の医療専門家や大学・企業とともに研究・論文発表等を行う。2012年には世界規模の「卵巣年齢研究」に着手し、NHKテレビで取り上げられる。著書『タニタとつくる美人の習慣』(講談社)、『BABY BOOK』(ラブテリ)。

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