妊娠、出産にまつわるデータ集:第1回
「小さく産んで大きく育てる」は間違い?
低出生体重児のリスク

ミキハウス編集部

ママになる前に考えたい「低出生体重児」のこと

02

ひとつは、低出生体重児の赤ちゃんは「倹約型体質(Thrifty pheno-type)」をもって生まれてくると言われています。聞き慣れない言葉だと思いますが、わかりやすく言えばこれは、少ない栄養でも生きていけるように“省エネモード”を働かせる体質のこと。妊娠時にママが適正な体重を維持せず、母体が低栄養になることで、子宮内で胎児も低栄養状態に陥り、生まれた後も倹約体質になり、脂肪がつきやすくなってしまうのです。

ふたつめは、将来「生活習慣病」になってしまう危険性を高めるというもの。大人になってからも低体重で生まれたことによる影響を持ち続けるとは驚きですが、世界各国で行なわれている研究結果が成人以降の肥満、生活習慣病と出生体重との関連を相次いで報告しています。

例えば、雨期と乾期があるカンボジアで生まれた子どもの成人以降の健康状態を調査した大規模疫学調査の報告では、食べ物が少ない乾季に生まれた子どもの方が、食べ物が多い雨期に生まれた子どもよりも成人期における健康状態が良かったことがわかっています。これは、乾季の子どもたちのもつ「倹約型体質」が、食べ物が乏しいカンボジアの環境にマッチしたため、と考えられています。ただし、倹約型体質の持ち主は燃費が良いため、飽食の環境になってしまうとかえって肥満や2型糖尿病になってしまうリスクが高いと仮説されています。つまり、倹約型体質をもった赤ちゃんが日本のような飽食の国に生まれてしまうと、その子のもって生まれた「体質」と育つ「環境」がミスマッチを起こし、様々な病気を発症するリスクが高まってしまうのです。これを「ミスマッチ仮説(適応不全仮説)」といいます。

日本においても、生まれたときの体重が2,500gを下回る低出生体重児の女性は、将来妊娠をしたときに妊娠糖尿病になりやすいという調査結果を厚生労働省が発表しています。国立生育医療研究センター母性医療診断部の荒田尚子医長らが2006〜2009年にセンターを受診した363名を対象に妊娠糖尿病と生まれたときの体重の関係を調べたところ、2,500g未満で生まれた女性は2,500〜4,000g未満で生まれた女性よりも妊娠糖尿病に約6倍、なりやすかったことが報告されています。

妊娠糖尿病だけでなく、ヘルシンキ大学のJ. Erikssonらは、昔の分娩台帳を調べ、男児で2,500g未満の低出生体重児は、成人後に肥満が約2倍、女児の低出生体重児では1.7倍発症していることを報告しました(*2)。

肥満は生活習慣病の温床ですから、2型糖尿病、虚血性心疾患、本態性高血圧症、メタボリックシンドローム、脳梗塞、脂質異常症、血液凝固能の亢進などが低出生体重児と関連するとして研究が進められています。

  1. *2: Eriksson et al., Int J Obes Relat Metab Disord. ; 25:735, 2001

 

次のページ 妊娠前からの食生活改善も心がけて

この記事をシェアする

  • Facebook
  • X
  • LINE

おすすめの記事を見る

記事を探す

カテゴリから探す

キーワードから探す

妊娠期/月齢・年齢から探す