妊娠しても流産、死産や新生児死亡などを繰り返すことを「不育症」(*2)といいますが、2007年の全体人口統計と比例させると、不育症の女性は全国で140万人いると推定されています。
しかし、その後の継続調査の結果、不育症患者105人のうち約9割の94人は、最終的には無事に出産し、育児を経験しているということが明らかに。かつては、3回以上流産したら妊娠の可能性は極めて低いと言われることもありましたが、杉浦教授によって、「不育症でも85%は出産可能だ」というコメントも発表されました。
(*2)「習慣(反復)流産」とほぼ同意語であるが、妊娠22週以降の死産や生後1週間以内の新生児死亡は含まれない。
不育症の半分は胎児の染色体異常が原因と推定
また杉浦教授らが、2007(平成19)年までの約20年間に名古屋市立大病院を受診した不育症の夫婦1676組に調査を実施しました。そこで不育症の原因を分析しているのですが、(図2)、不育症の原因のうち51%が、確率的要因で発生してしまう赤ちゃんの染色体異常であると推定されました。
厚生労働省研究班によると、全流産数のうち赤ちゃんの染色体異常が原因の割合は約8割だとされていますが、3回流産を繰り返した場合、「0.8×0.8×0.8=0.512」となり、全流産数のうちの51%を占めることになります。つまり、不育症全体のうち約半数は偶発的な原因によるものであり、その場合とくに治療をしなくても、次の妊娠で成功する確率は決して低くないといえそうです。
流産を繰り返すことは、ママにとっても、その家族にとっても、非常につらいこと。妊娠、出産に対して消極的な気持ちになってしまうこともあるでしょうが、あきらめる前に専門の医療機関に相談してみるとよいのではないでしょうか。
「妊娠したら出産する」ということは 実は“当たり前”のことではなく、さまざまな障害やリスクを乗り越えたうえで成立するのですね。もしものときのトラブルについて事前に把握しておくことも大切です。
【引用元】
・習慣流産・不育症グループ(習慣流産・不育症のみなさんへ)-名古屋市立大学大学院医学研究科 産科婦人科学
http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/obgyne.dir/group_huiku.html#report1